鬼滅の刃が狂言師 野村萬斎さんによって狂言舞台化されることが「ジャンプフェスタ2022」にて発表されました。この記事では
「能?狂言って何?」
「歌舞伎と違うの?」
「鬼滅の狂言ってどんな感じなの?」
そんな方向けに「能」や「狂言」とは、なぜ萬斎さんに白羽の矢が立ったのかについて私なりに解説しています。
萬斎さんの主演映画を5つ、現代能の舞台を1回観劇している自分は、萬斎さんの「鬼滅・狂言舞台化」を聞いてだいぶ興奮しています。
- 9/13(水)~9/17(日)福岡・大濠公園能楽堂
- 9/27(水)~9/28(木)愛知・名古屋能楽堂
- 9/30(土)~10/1(日)神奈川・横浜能楽堂
7/1(土)10時より一般販売開始!
能とは何?狂言とは?分かりやすく解説
能(のう)は狂言と共に14世紀の室町時代から約650年以上の歴史がある日本の古典芸能。能と狂言を合わせて「能楽」と呼ばれます。
重要無形文化財に指定され、ユネスコ無形文化遺産に登録されている、海外からの評価も高い日本の伝統文化です。
『能』とはお面をつけた歌舞劇
面(能面)をつけてセリフ・歌、お囃子に合わせて演じる歌舞劇で華やかな衣装が特徴。
物語には人間以外に神・鬼、妖怪や幽霊なども登場。鬼滅の刃の鬼退治の話は自然に馴染みますね。
動きは様式的な動きで感情を表現。独特なお囃子や笛、太鼓の音は不思議な心地よさがあります。
能のお面に由来した表現に「能面のような顔」「般若(はんにゃ)みたいな顔つき」などがあります。
『狂言』はお面をつけない喜劇
きらびやかで様式的な「能」と違い、狂言はお面をつけずに笑ったり話したりと、セリフが中心の喜劇。
かまぼこ隊のコミカルなやり取りは、この「狂言」的な要素で作られるのではないかなと推測しています。
歌舞伎と能・狂言はどう違う?
歌舞伎の発祥は江戸時代なので約400年前。狂言・能ができて250年ほど後に生まれました。
能楽は徳川家康、豊臣秀吉などの位の高い武士や侍が好み、武家社会の典礼用の正式な音楽として扱われました。
一方、歌舞伎は大衆向けの芸能として町人や武士といった庶民に親しまれました。衣装も能楽よりもずっと煌びやかで化粧もハデハデ、分かりやすい華やかさがあります。
売れっ子の歌舞伎役者や演目が描かれた浮世絵がたくさん残っていますね。
演者の外見バランスにも特徴的な違いがあります。
「能」は衣装が大きくお面が小さい小顔バランス。
逆に「歌舞伎」は俳優の顔に化粧を直接施し、表情の良くわかる、顔を大きく見せるバランスです。
鬼滅の刃の狂言舞台化が、なぜ野村萬斎さんなのか?
はい、それではなぜ、鬼滅の刃の能楽舞台化を野村萬斎さんなのでしょうか?
それは650年の日本伝統芸能の歴史を背負いながらも、現代芸能、他のジャンルにも積極的に挑戦し、あらゆる『芸能』を融合させるような活動をされているからです。
鬼退治という日本昔話的な側面とファンタジーな要素を併せ持つ「鬼滅の刃」は、古典と現代芸能の両方を知り、クロスジャンルの表現を追求する萬斎さんとは、ある意味 "相性が良い" とも言えるのです。
化学反応が起きそうな気配です。
1分で分かる!野村萬斎さんとはどんな人?
野村萬斎(のむらまんさい)さんは狂言師・俳優・演出家として著名な方ですが、アニメ・漫画ファンの方にとってはあまり馴染みのない方もいらっしゃるかもしれません。
ここでは萬斎さんがどんな方かが簡単に分かる解説をいたします。
萬斎さんは生粋の伝統芸能の血筋の方
3歳で狂言の初舞台を踏んだ萬斎さんは曽祖父、叔父、伯父、父、息子が狂言・能楽師という生粋の能楽の血筋に生まれた方でありながら、伝統芸能だけに留まらず幅広い活動をされています。
野村萬斎さんは現代ドラマ、映画、舞台でも活躍
最近であれば米倉涼子さん主演「ドクターX〜外科医・大門未知子〜 第7シリーズ」で蜂須賀隆太郎 役で出ていましたし、NHK教育の「にほんごであそぼ」では2003年から10年近くも出演しつづけています。
東京2020年オリンピックでは開会式・閉会式プランニングチームのチーフ・エグゼクティブ・ディレクターに当初就任されました(コロナ感染拡大で演出見直しのため解散)。
またバレエ曲で有名な「ボレロ」を「能」で表現した「MANSAI ボレロ」を作って演じたりと、あらゆるジャンルをまたがった表現活動を行なっているのです。
私が見た以下の映画はどれも大ヒット作。『萬斎を主演にするとヒットする』というジンクスがあるとかないとか。
萬斎さん主演の映画の一部
- 陰陽師(2001年)- 安倍晴明 役
- 陰陽師II (2003年)- 安倍晴明 役
- のぼうの城(2012年)- 成田長親(のぼう様)役
- 花戦さ(2017年)- 初代池坊専好 役
- 七つの会議(2019年) - 八角民夫 役
映画『シン・ゴジラ』(2016年)では、モーションキャプチャーでゴジラの動きを演じ話題になりました。こちらも大ヒットしています。
祝!!「シン・ゴジラ」公開!!
先ほど初日舞台挨拶で発表がありました、ゴジラ役は野村萬斎さんに演じて頂きました!
人の動きをモーションキャプチャーでフルCGゴジラに反映しているのです!#ゴジラ #シンゴジラ pic.twitter.com/wrH7Af1J0S— ゴジラ (@godzilla_jp) July 29, 2016
萬斎さん主演の大ヒット映画「陰陽師」 原作はダークファンタジー小説
映画『陰陽師』(おんみょうじ)は、平安時代を舞台にした夢枕獏原作のダークファンタジー小説を映画化したもの。萬斎さん演じる安倍晴明(あべのせいめい)は妖艶で中性的、独特の存在感でした。
この題材は、後に『陰陽師 安倍晴明』と題し、「現代能」の舞台にアレンジされています。
以下はその公演の取材インタビューからの抜粋です。
現代能と銘打っていますが、能、狂言、宝塚歌劇、日本舞踊、イリュージョン、プロジェクションマッピングなど、さまざまな表現手法を用いた絵巻物のようなエンターテインメント作品です。
能や狂言というと身構えてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、“能や狂言の入り口”になるような作品だと思います。
野村萬斎演出の現代能『「陰陽師 安倍晴明」~晴明 隠された謎…~』追加公演 取材会インタビューより
SPICE
現代芸能と古典芸能。
「鬼退治」という古典的ストーリー。
ダークファンタジーな世界。
こうくると「鬼滅の刃」と萬斎さんは、なるほどな… と思えて来ませんか?
決して唐突なものではなく、いや逆に伝統芸能をベースに、何か見たことのない新しい世界を見せてくれそうな気がするんですよね。
ワクワクが止まらねえぜ!(伊之助風)
映画『陰陽師』の曲および作中の萬斎さんの舞いを、フィギュアスケーターの羽生結弦さんがフリープログラムに採用(『SEIMEI』)。安倍晴明の狩衣をイメージした衣装で踊るこの演目で、男子史上初のグランプリファイナル三連覇、平昌オリンピック金メダルを獲得しています。
『我々はジャンルを横断する活動をして行かないといけない』
萬斎さんは伝統芸能の世界に閉じこもらず、それを背負いながらも他ジャンルへの進出を意識して行なっていることが、以下のインタビューからも分かります。
…こういう風に情報として取り上げていただくということが我々にとっては重要ですよね。
そうじゃないと(我々は)秘密結社みたいになって来ちゃうからね。
ネット上のニュースは個人の趣向によって入ってくるものが決まってくる。
検索すれば様々な情報が入ってくるが、検索しないと永遠に入ってこない。
なので我々はジャンルを横断するような活動をしていかないといけないと思う。
ー野村萬斎インタビュー
【ジャポニスム2018】野村万作・萬斎・裕基の三世代がパリで魅せた「ディヴァイン・ダンス 三番叟」 より
萬斎さんの有名な「三番叟」映像
萬斎さんの「伝統芸能」を演じる姿を見たい方に、2018年、野村三世代がパリで魅せた「ディヴァイン・ダンス 三番叟」を取材した動画がありますので雰囲気をご覧ください。
【三番叟(さんばそう)】は
ドスン!と足拍子を多用し、鈴をふりながら「死・再生、命」と「五穀豊穣」を祈る作品で、パリ公演で親子三代で演じた有名な演目です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「狂言・能」の雰囲気と世界観がなんとなくでも分かり、興味をお持ちになったら動画サイトに萬斎さんのパフォーマンスが色々上がっているのでご覧になってみてください。
また、狂言・能の舞台はかなり頻繁に上演されていますので、チェックされると行きたい公演が見つかるかもしれません。
記事執筆時点では、鬼滅の刃のプロジェクトは萬斎さんのこのコメントのみ情報が発表されています。
2021年はビッグなリアルイベントは原画展(東京展。大阪は2022年)でしたが、2022年もまた大きなイベントができて嬉しいですね。楽しみに続報を待ちましょう。